庭でコメを育ててみたいと思ったのですが、近所で苗を少量だけ入手するのは困難です。そんなとき、苗はスーパーで販売されている玄米からも苗を育てることができることを知りました(参考ブログ)。
実際に試したところ、発芽から田植え、収穫まで成功したので、その事例を紹介したいと思います。
ちなみに私は農学部出身で、稲作は実習でもベランダ菜園でもやってみたことがありますが、意外とカンタンで興味深いものです。
食育にもなるので、試してみてはいかがでしょうか。
玄米からのイネづくりの概要
玄米を田んぼに直接まいてみても、稲は育ちません(実験済み)。
まず最初は、春に田んぼに植えるための苗をつくる必要があります(育苗)。
玄米を発芽させて苗を作ったら、GW頃に移植(田植え)を行います。
少量の稲作に使う容器は、私は昔メダカ飼育に使用した睡蓮鉢 (Amazon)を使用しましたが、何でも構いません。丈夫で水を溜められるものであれば、ポリバケツ、発泡スチロールの容器、ペットボトルを切った物でもOKです。
あとは日当たりの良い場所で水を切らさないようにすれば、秋の初めに収穫できることでしょう。
玄米を発芽させる
玄米の発芽について説明する前に、コメの構造をかんたんに紹介します。
収穫できる米には籾(もみ)があり、これを除去したものが玄米です。
ふだん食べる白米は、玄米を精米し、ヌカと胚芽がとれた状態です。
胚芽は芽になる部分なので、発芽には欠かせません。
本来、育苗につかうコメは籾付きの籾米ですが、籾は発芽に必須ではないため、玄米でも発芽は可能です。
とはいえ、籾は外部環境から中身を保護する役割を担っているため、籾のないハダカの玄米は雑菌に弱く、育苗にあまり適していません。
そのため、玄米から発芽させる場合は、衛生面に注意したうえ、育たない粒が多いことを見越して、多めに用意する必要があります。
玄米は何でもOKですが、発芽玄米だけは不可です。発芽玄米は発芽後に乾燥させて枯れているため、再度発芽させることはできません。なお、籾付きのコメが手に入るのであれば、それにこしたことはありません。
品種によって早生(ふさおとめなど)と晩生(コシヒカリ、粒すけなど)などの違いがあるので、時期によって使い分けるとよいかもしれません。ちなみに私が使った玄米は、たぶんコシヒカリです。
本格的な育苗の方法は、みんなの農業広場というサイトのこちらのページに細かい解説があります。温度管理などで参考にしてください。
大雑把な私はどうしたかというと、以下のように、ヨーグルトのフタに玄米をテキトーに入れ、水道水に浸しました。
このとき、次亜塩素酸やハイターを加える方法もあるようですが、面倒だったので何も加えませんでした。何も加えない分、衛生面に注意して、浄水ではなく塩素の含まれる水道水を使い、水替えを1日に2回とやや頻繁に行いました。
温度は室温(23℃)です。ときどき暖房を使っていたので室温はこの程度でしたが、一般に 3月はまだ寒いので、暖かい場所がない場合は保温が必要になるかもしれません。
わが家の場合、この方法で翌々日に発芽を確認できました。ただし、すべての芽が出ていたわけではなく、まだ芽が小さかったため、もう一日待ってから移植することにしました。
移植は、そこらにあった苗ポッドにてきとうな庭土を入れ、湿らせてからピンセットで一粒一粒並べてみました。
本来は育苗用培土を使用したり、殺菌してpH調整したりするものですが。。。
並べ終えると、隠れる程度に土をふりかけ、バケツに入れて土表面とバケツの水位を同程度にし、ヒタヒタになるようにしました。
この状態で、暖かい日中はバケツを外に出し、寒くなる夜間は念のため室内(玄関)に移動するといった方法で苗を育ててみました。
すると約2週間後…
さらに一週間後…
数えてみると、約44粒の玄米からスタートし、苗っぽくなったのが 8,9 本といったところです。
約2割が育ち、残りは枯れたり腐ったりしてしまったようです。
田植え~収穫まで
苗は育ってきたものの、いつ、どの程度に育ったら田植えが可能になるのでしょうか。
クボタのサイトによると、
苗の草丈が12~15cm、本葉が3.5~5枚ぐらいになったら、田植えです。
とのこと。
育つのを待っていたら、4月末頃にそのくらいに育っていました。
近隣の農家はGW頃に田植えをしていることが多いので、ちょうどよいタイミングな気がします。
一般的には、田植えは平均気温15℃以上となる頃に行うそうです。
バケツの水にアオコ?が発生しているのは、おそらく、そろそろ肥料が必要かと思って液肥を入れたせいでしょう。
育ちの悪い苗もあり、植えられそうな苗は6本ほどとなっていました。
田植えの準備
睡蓮鉢に適当な庭土を入れ、水を張ってから田植えを行いました。
根を傷つけないよう注意してほぐし、2本で1セット(1株)とし、3箇所に分けて植えてみました。
一般的には、株間は 15~30cm、1カ所に 3 本前後を植えるそうです。
田植えの途中、ペットの鳥につつかれて鳥害を受けてしまいましたが、何とか植えることができました。
田植え前後の水管理については、こちらのページに解説されています。
機械で田植えする場合は作業性のためにヒタヒタ程度にし、作業終了後、苗が活着するまでは苗の葉先が少し見える程度の深水を保持し、活着後は浅めで管理するそうです。
しかし、小規模の手植えの場合は作業性を無視できるので、最初からやや深めがお勧めです。水が浅いと自重で倒れやすいように思います。
こんなやり方でちゃんと育つだろうかと疑問でしたが、
拡大するとわかりますが、すでに穂が出ています。
肥料も農薬も使っていないのに、すごい成長力です。
稲刈りの時期は、クボタのサイトによると、「穂が出てから約40~45日、黄金色の稲穂が垂れ下がると稲刈りの時期」とのこと。
穂がいつ出たのか忘れてしまいましたが、7月末には出穂していたので、たぶんこのくらいだろうと、この日に収穫しました。
稲刈りは、鎌で根元近くを刈り取ります。
ちなみにこのときも、鳥害を受けました。ジャンプして穂をくわえ、くちばしで脱穀してしまいます。
なお、稲は刈り取った後も成長し、また穂をつけることがあります。