庭ニワトリの卵は洗うべきか?生の卵かけご飯は大丈夫?サルモネラ菌の心配は? | 東葛育児録
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庭ニワトリの卵は洗うべきか?生の卵かけご飯は大丈夫?サルモネラ菌の心配は?

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ニワトリ飼育

日本の卵は生で食べられるほど安全性が高いと評価されています。市販されている鶏卵は洗浄された卵(洗卵)がほとんどですが、平飼いの養鶏場にはあえて洗浄しない無洗卵を販売しているところもあります。

わが家のような庭先養鶏の場合、卵を洗うのと洗わないのとでは、どちらが正解で、どうすればよいのでしょうか。

ここでは、庭で飼育しているニワトリ(庭先養鶏)の卵の衛生管理について考えてみたいと思います。ちなみに私は農学部出身であり、微生物学の基礎程度はかじっているレベルです。

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無洗卵について

無洗卵とは、読んで字のごとく、洗っていない卵のことですが、洗わないのには理由があります。

産卵されたばかりの卵の殻の外側にはクチクラ層があり、洗うとこれが取れてしまうからです。
ニワトリの大研究 歴史・生態から人とのかかわりまで (楽しい調べ学習シリーズ)』(森誠監修、PHP、2019)によると、クチクラ層には、細菌などの微生物の侵入を防ぐ機能があります。

そのため、卵本来の防御力を生かすには、洗わないというのも一理ある方法なのです。プールで水道水での洗眼が推奨されなくなったことと、少し似ているかもしれません。

とはいえ、無洗卵の表面には何が付着しているかわからないため、取扱いには注意も必要です。

庭先養鶏のわが家の場合(以前)

わが家のニワトリがサルモネラなどを保菌しているかどうかは不明です。しかし、決して衛生的とはいえない庭の虫や土や草を食べているし、水溜りの水も飲むし、庭を訪れる野鳥を完ぺきに追い払うことはできないため、卵が微生物的に汚染されていないとは思えません。

心配ならば完全に加熱して生で食べなければよいのですが、私はあまり心配しないたちなので、以前は、庭先養鶏の卵を一切洗わず、そのまま割って生で食べていました。

しかし、ある日、卵が原因かは不明ですが、食中毒のような下痢症状が発生してしまいました。
熱が出ることもなくすぐに治ったので病院にはかかりませんでしたが、なんとなく卵が原因な気もします。

そこで改めて卵の衛生管理や洗い方について調べ直し、次の方針を取ることにしました。

さまざまな文献を読んで調べたことについては、細かい話なので後述しています。

食中毒リスクを減らす卵の取扱方針

私はこれからも、卵かけご飯を食べたいと思っています。

美味しいので。

詳細 庭先養鶏の卵は美味しい?卵かけご飯に合う醤油は?

とはいえ、できることなら食中毒は起こしたくありません。

そこで、食中毒のリスクを減らすためにどうすればよいかを考えて、以下のことを行うようにしました。

理論上はかなりリスクを減らすことができますし、この方針に切り替えてから今のところ、生食後にお腹を下したことはありません。

卵を触ったら手を洗う

これは基本ですし、昔からやっていたつもりですが、念のため書いておきます。
卵の保管場所を含め、卵が触れたところや、卵を触った手で触れたところは、すべて細菌汚染されると考えて、適宜手洗いと消毒を行います。

汚卵は慎重に扱う

正常な卵を洗うべきかどうかは結論が出ませんが、卵殻にフンなどが付着している「汚卵」に特別な注意が必要なのは明らかでしょう。
衛生基準などを読むと、汚卵は必ず洗浄し、150ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液などで消毒する措置が講じられています。

わが家では、汚卵はすぐに流水で洗い、紙で拭き取り、乾かしたら冷蔵庫で保管し、加熱調理に利用するようにしています。

なるべく早く冷蔵保存する

きれいな正常卵であっても、卵殻にサルモネラなどが付着していたら、常温では増殖して卵内に侵入する可能性があります。

そのため、増殖を防ぐよう、産卵後はなるべく早く回収し、すぐに冷蔵庫に入れて保存するようにします。

卵を割る直前に流水で洗う

卵を割るときは、いくら注意していても、卵白が卵殻に触れてしまうことがあります。
これでは生で食べる場合、卵殻に付着した微生物を直接口に入れてしまう可能性があるため、卵を割る前には流水で洗うほうがよいでしょう。

細菌をゼロにすることは難しくても、大量の菌を取り込んでしまうリスクは低減できるので、発症のリスクを下げることが期待できます。

使用直前なら、洗ってクチクラ層がはがれても、何らデメリットはありません。

これは、無洗卵を扱っている養鶏場のWebサイトにも、「調理前や卵を割る前には洗ってからご使用ください」と書かれていたので、推奨される手順のようです。

卵のサルモネラのリスクに関する調査情報

上記の方針は、サルモネラについて調べてみた以下の資料を参考にしました。
個人的に気になったポイントをかいつまんで紹介します。

まず、サルモネラ(Wikipedia)をチェックしたところ、次のことがわかりました。

  • サルモネラ属には、病原性のないものを含め多様な細菌が含まれる
  • 卵殻の外側だけでなく、卵黄や卵白が保菌することもある
  • 一般的なサルモネラ属菌では、発症するのに10万個以上の菌数が必要(例外もある)
  • 高温で不活化し、乾燥・低温(5℃以下)で増殖を防ぐことができる
  • 感染しても発症せず排菌だけ続く場合がある
  • 一部のサルモネラには有効なワクチンもある

また、『鶏卵の生産衛生管理ハンドブック』(農林水産省、2012、PDF)を読むと、日本での興味深い調査結果が見つかりました。

  • 無窓鶏舎でのサルモネラ保有率は約5割、開放鶏舎では約1割
  • 市販の2030パック中、卵黄や卵白からはサルモネラ不検出、卵殻からは 0.2% で陽性
  • うち、陽性の鶏卵はすべて洗浄済みの洗卵であった

つまり、衛生的とされる施設でも鶏のサルモネラ保菌を防ぐことは難しく、洗卵であっても卵殻には注意が必要ではありますが、卵黄や卵白にサルモネラが含まれることは滅多にないようです。

無洗卵の汚染については、「殻付卵表面の細菌汚染状況とその汚染源に関する研究」(日本食品微生物学会雑誌, 13(3), 111-116, 1996、PDF)によると、

  • 養鶏場によっては無洗卵でも洗卵したものより低い汚染を示す
  • 衛生管理を適切に行うことにより無洗でも少ない汚染菌数のものが得られる
  • 正常卵の場合は洗浄せずに割卵してもよい
  • 洗卵によっても卵表面の細菌数は101~103程度しか減少しない

とのこと。

鶏飼育で注意すべき衛生管理のポイントについては、以下のページにある資料が参考になります。

飼養衛生管理基準について(農林水産省)

最後に、概論としては「食卵によるサルモネラ食中毒の現状と対策」(Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. 60, No. 7, 375∼379 (2013)、PDF)にわかりやすくまとめられており、お勧めです。

特に、「おわりに」に書かれている食中毒予防の3原則(微生物をつけない・増やさない・殺す)は重要です。また、以下に引用する最後の一文に、その通りだと思いました。

本来,食事は栄養を取るためのものだけでなく楽しむためのものでもある.むやみに恐れることなく食品のもつリスクを熟知し,あらゆる段階でのリスク管理措置により,健康で文化的な生活を送っていただきたいと願っている.

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