わが家ではペットとしてニワトリを飼っていますが、ニワトリ飼育は経済的に儲かるのでしょうか?
ふと疑問に思い、エサ代(コスト)と、スーパーで購入する卵代(生産高)とを月ごとにざっと比較してみました。
その結果わかったのは、ふつうに配合飼料を購入している限り、利益を出すことは難しいということと、20か月以上飼育することは経済効率の観点でみると最善ではないということです。図らずも、廃鶏が起きる理由が判明してしましました。。
廃鶏とは、産卵効率の落ちた雌のニワトリを鶏舎から出すことです。養鶏場では、鶏は生まれて約5か月で産卵をはじめてから1年ほどで産卵数が落ちてくるため、一般的に1年~2年で廃鶏に出されます。本来は 7 才くらいまで卵を産むことができ、健康であるにもかかわらず。。
なんでそうなるのか、なんとかできないのか考えるには、まず、以下の計算をご覧ください。
雌鶏1羽の餌代と卵の生産高の推移
ここでは、ニワトリの餌代と卵の生産高の関係を計算してみます。
わが家で飼っているニワトリの品種は、商用の産卵鶏である「ボリス・ブラウン」です。
この品種については、検索すれば必要な餌の量や産卵率などの詳細な資料が見つかるため、以下の表を作成してみました。
餌代は、近所のホームセンターで売られている配合飼料 15kg の価格 2,838 円を用い、卵は 1 パック 10 個 230 円としました。エサ代は以前はもっと安かったのですが、2022年になって急に値上がりしています。。
月齢 | エサ量kg | エサ代 | 累計コスト | 生存率 | 産卵率 | 月産卵数 | 累計産卵数 | 生産高 | 累計生産高 | 生産高/コスト | 累計生産高/累計コスト |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~5 | 7.0 | 1324 | 1324 | 99.8% | 12% | 3 | 3 | 78 | 78 | 0.06 | 0.06 |
6 | 2.9 | 556 | 1881 | 99.5% | 81% | 23 | 26 | 524 | 603 | 0.94 | 0.32 |
7 | 2.9 | 556 | 2437 | 99.2% | 94% | 26 | 53 | 607 | 1210 | 1.09 | 0.50 |
8 | 2.9 | 556 | 2993 | 98.9% | 94% | 26 | 79 | 605 | 1815 | 1.09 | 0.61 |
9 | 2.9 | 556 | 3549 | 98.5% | 93% | 26 | 105 | 598 | 2413 | 1.08 | 0.68 |
10 | 2.9 | 556 | 4106 | 98.2% | 92% | 26 | 131 | 591 | 3004 | 1.06 | 0.73 |
11 | 2.9 | 556 | 4662 | 97.9% | 90% | 25 | 156 | 580 | 3583 | 1.04 | 0.77 |
12 | 2.9 | 556 | 5218 | 97.6% | 89% | 25 | 181 | 570 | 4154 | 1.03 | 0.80 |
13 | 2.9 | 556 | 5774 | 97.3% | 87% | 24 | 205 | 559 | 4713 | 1.00 | 0.82 |
14 | 2.9 | 556 | 6331 | 96.9% | 85% | 24 | 229 | 547 | 5260 | 0.98 | 0.83 |
15 | 2.9 | 556 | 6887 | 96.6% | 83% | 23 | 252 | 536 | 5796 | 0.96 | 0.84 |
16 | 2.9 | 556 | 7443 | 96.3% | 81% | 23 | 275 | 524 | 6320 | 0.94 | 0.85 |
17 | 2.9 | 556 | 7999 | 96.0% | 79% | 22 | 297 | 511 | 6831 | 0.92 | 0.85 |
18 | 2.9 | 556 | 8556 | 95.6% | 77% | 22 | 319 | 495 | 7326 | 0.89 | 0.86 |
19 | 2.9 | 556 | 9112 | 95.3% | 74% | 21 | 339 | 476 | 7802 | 0.86 | 0.86 |
20 | 2.9 | 556 | 9668 | 95.0% | 71% | 20 | 359 | 460 | 8262 | 0.83 | 0.85 |
計算からわかること
20か月(1年8カ月)飼育したとして、節約できた卵購入費よりエサ代のほうが高くなっている状況です。
エサ代以外の経費(小屋代、水道光熱費、人件費など)を一切考慮していないにもかかわらず、です。
わが家はペットなので採算が合わなくても全く気になりませんが、養鶏場なら赤字です。
養鶏場ではエサを大量購入したり食品廃棄物を利用したりして安くしているのでしょうが、それでも1パック 200 円程という卵の低価格さに驚かされました。
注目したいのは、右端の列「累計生産高/累計コスト」の指標が19カ月から20カ月にかけてピークアウトすることです。
産卵率の低下が大きく影響するため、Excel でエサ代や卵代の設定値をいくら変えてみても、19カ月あたりでこの指標が低下することは避けられません。
つまり、経済効率(利潤)を追求すると、産卵率が下がる1年半ほどで廃鶏に出すことは避けられないのでしょう。
とはいえ、月々の卵代がエサ代より高ければよいと考えると、卵代が高くなればなるほど、ペイできる月齢は長くなります。
極端な話、卵が 1個 100 円で売れるなら、月に6個産んでくれればエサ代の元はとれるわけです。月に6個の産卵率は21%です。ここまで下がるのは何歳くらいかはわかりませんが、そうすればその年まで鶏を処分しなくてもやっていけるということです。
逆に、卵をなるべく安く買いたいと思うなら、現在の廃鶏のしくみは変えられません。産卵率を落ちないようにする工夫などもありますが、期間をちょっと伸ばせる程度でしょう。
養鶏場のニワトリにも幸福でいてもらいたいものですが、難しい問題です。