青少年読書感想文全国コンクールの2022年の課題図書が発表され、小学校中学年の部に『この世界からサイがいなくなってしまう アフリカでサイを守る人たち』という本が選ばれていました。
珍しい動物の生態だけでなく、密猟という社会的問題もかかわるテーマなだけに、学ぶことが多そうです。
アフリカのサイが絶滅に瀕しているとは聞いたことはあっても、詳しくは知りません。本ではアフリカのクルーガー国立公園で2019年までシロサイとクロサイが減少を続けている図が載っていましたが、もっと長期的にみたサイの個体数の推移や、コロナ禍を経たサイ保護の最新事情はどうなのか調べてみました。
サイの個体数の動向は、種類や地域によって差があります。アフリカのシロサイとクロサイの個体数の動向は以下のとおりです。
出典:INTERNATIONAL RHINO FOUNDATION
シロサイ(white rhino)の個体数は50年前よりは増えていますが、近年は減少傾向にあります。
クロサイ(black rhino)の個体数の動向は近年は一時期よりはマシになっているものの、50年前と比べるとまだまだ少ない状況です。
以下の図は、アフリカのサイの推定密猟数の推移です。
出典:SAVE THE RHINO INTERNATIONAL Web サイト
2020年からはだいぶマシになったように見えますが、事情は複雑です。密猟数が減ったのは、個体数が減って密猟が難しくなったせいかもしれないし、一時的なことかもしれないからです。
この図ではわかりませんが、密猟が近年急増していた南アフリカに限定すると、密猟数は2021年に再び増加しています。2020年はコロナにより南アフリカで夜間外出禁止令が出ていた影響で密猟が減っていたのですが、制限が解除されると再び増加に転じたようです。
また、コロナの影響で観光収入が落ち、保護のための資金確保が難しくなっている事情もあるようです。レンジャーたちがヘリでパトロールしたりするにはお金がかかるので、ここも今後重要なポイントになりそうです。
サイはいつと比べてどのくらい減っていて、本当にいなくなってしまうのかなと興味をもって調べたのですが、増えているとも減っているとも言い切れない、複雑かつ予断を許さない状況であることがわかりました。